大谷和利著『iPhoneをつくった会社』アスキー新書
p.5
これからの企業にとって成功と成長の鍵を握るのは、優れた製品を作るだけでなく、顧客との関係を可能な限り密なものとしていくことにある。この観点に立てば、目まぐるしいほどのモデルチェンジで消費者の購買欲を煽るマーケティングはすでに時代遅れであり、ユーザーに愛され、ユーザーと共に成長いていける包括的なシステムを作り上げることが重要だ。
p.27
今も続く彼らのやり方は「自ら土俵を作ってルールを決める」ということにある。そして、世界初・業界初でなくとも、そのカテゴリーの中で最良の製品作りを目指すのだ。
p.59
アップル社に「ハードウェアを捨ててOSをライセンスしろ」と言うことは、喩えれば、ポルシェやBMWに「車体開発を止めてエンジンの電子制御やサスペンションのチューニングのノウハウを他社に供給せよ」とアドバイスするようなものだ。それらの個性的な自動車メーカーの市場シェアも数パーセントに過ぎないが、企画・設計ノウハウだけをライセンスすることはなく、製品をトータルに開発して販売する道を選んでいる。それが、自社のブランドを守り、優れたユーザー体験を創出する唯一の方法だと知っているからだ。
p.80
業績とマスコミ受けが共に相悪だった1987年も、ジョブズ復帰後の”Think different.”戦略が功を奏して見事に復活を遂げた今も、コアなマックユーザーは変わらずにアップル製品とアップルデザインを愛してきた。それは、アップル社のポリシーがマーケティング主導やコスト優先から生み出されたものではなく、常に新しいアイデアを提示してユーザーを啓蒙し、挑発するスタイルを採ってきたからに他ならない。