小川浩著『フィードがグーグルの世界制覇を阻止する!』ビジネス社

p.42

ウェブの理想は、世の中の99.99%の人には価値のない情報でも、その情報を必要とする0.01%の人へ確実にいきわたるデータベースの構築であり、実際にその方向に向かっている。

p.52

しかしながら、あまりにも簡単に誰もがウェブ上に情報を書き込めるようになった弊害もあるにはある。たとえば若い女性が書いているようなブログだと、写メールで撮影したらしい自分の笑顔の写真に添えて、一言「ウキャッ!」と書かれているだけだったりする。これを私は「ウキャブログ」と命名したのだが、こんな意味のない内容ばかりがずらずら並んでいるブログは決して珍しくない。

p.55

ブログ自体はこれからも増えていくだろうし、「ウキャブログ」が悪いわけではない。ただ、更新されてしまえばまったく無価値になり、二度と誰も見ない情報が、毎日莫大な量で蓄積されているのがいまのウェブの現状である。逆に言うと、こうした情報そのものを検索対象から省くのか、省かないのか、ということも今後は情報のSN比(シグナルノイズ=自分とは関係のない、雑音的な情報の流入)を下げることの大事な要件になるだろう。

p.154

その点、フィードは、どのような情報を発信するか、どのような情報を受け取るかの選択の権限がユーザーに与えられており、それを誰かが裏で誘導することもできない。すなわち、ユーザーがそれぞれ投票権を持っていて、自分の認めた者に票を入れることで、純粋に多くの支持を受けた情報発信者が選ばれるという、より民主的なモデルに進化する期待があることを意味している。

p.156

もともとコミュニケーションとはそういうもので、世界中のウェブサイトの中から、自分の好みのものを選ぶという多面的な広く浅いコミュニケーションの段階はウェブが適していたが、好みのものが見つかったら直線的なコミュニケーションになっていく。
いまは両方ともウェブが担っているが、ウェブは直線的な通信が苦手である。そこで、直線的な通信の分野はフィードが担当し、コミュニケーションをさらに先鋭化する方向へと向かうことになる。そしてウェブは、アーカイブとして情報をどんどん溜め込んで拡大していく方向に発展し、両者の進む道はきれいに分かれていくことになるだろう。

p.173

すると、ポータル化することによってページビューを集め、広告をとるというビジネスモデルがだんだん機能しなくなる。なくなってしまうわけではないが、ポータルの利用が低下すれば広告価値も減退する。そこで、今度はフィードに広告を載せようということになっているけれども、フィードは広告を外して見ることができる。好き好んで広告を見ている人は少ないので、広告を外して情報だけを見られるのなら多くの人がそうするようになる。いずれにしても、広告モデルはいまほどの支配的な力を持たなくなるのだ。

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