歌田明弘著『ネットはテレビをどう呑みこむのか?』アスキー新書

p.9

ネットという直接民主主義的な装置によって、ポピュリズムは確実に増幅される。もう10年すると、それがどういうことに行き着くのかは、さらによく見えているかもしれない。とはいえ10年後に、社会に致命的なダメージをあたえていなければよいのだが。

p.87

見返りを求めることなく制作し喜んで無料公開する大量の人がいて、そうしたコンテンツを集積したサイトが人気が出るというウェブ2.0の状況からすれば、ネットでは、コンテンツの制作側よりもコンテンツを流通させる企業の方が立場が強くなるのは当然だろう。

p.212

手間ひまのかかる一次情報の社会的価値と経済的価値の乖離はどんどん大きくなっている。社会的価値は変わらないものの、経済的価値が急速に下落し始めた。この矛盾は解消されるどころか、これからますます顕著なものになっていくだろう。

p.241

ネットがより浸透しパワーを増したとき、情報発信者でもある読者の「圧力」はいよいよ増す。しかも、多数派が常に正しいとは限らない。よく言われるように、間接民主主義はまだるっこしい感じがする一方、首長を直接選べる制度と比べて、国民の一時の感情によって大きく動くことはなく安定性が高いと考えられる。クッションが効くわけだが、ネットという直接民主主義的な場にあがったマスメディアは、仮借なく、そしてときに感情的な読者の反応にダイレクトにさらされることになる。経営基盤さえ危うくなりかねないこうした事態に、ほんとうにマスメディアは耐えられるのだろうか。

p.246

メンバー同士がコミュニケーションを図り、お互いから学ぶことで集団の利益になる場合もあるが、過度に密接なコミュニケーションは逆に集団の賢明さを損なう。
(スロウィッキー)

p.250

これまでのメディアは、権力といかにして戦うかが大きなテーマだった。しかし、これからはそればかりでなく、強力な情報発信力と影響力を持ち、感情的な反発もときに示すネット世論とどういう距離をとるかが、メディアでも個人の情報発信者でも同じぐらい重要なことになってきつつあるのではないか。

Leave a comment

Your comment