大谷和利著『iPodをつくった男』アスキー新書

p.54

かつて、ジョブズはビジネスウィーク誌のインタビューに答えて、次のような趣旨の発言をしたことがある。
「ユーザー調査を通じて製品をデザインしていくことには、大きな困難が伴う。たいていの場合、消費者は、具体的な形にして見せてもらうまで、自分でも何が欲しいのかわからないものだからだ」

齋藤孝著『ロングセラーの発想力』ダイヤモンド社

p.3

時代をとらえて次々と新しい商品を世に送り出すことは、もちろんビジネスの要諦である。そこからヒット商品が生まれれば、それに越したことはないだろう。だが、一つの商品がロングセラーとなって長く愛され続けるということも、ビジネスの理想的な姿である。やや大げさに言えば、その商品は社会の”普遍的な価値”を探り当てたことになるからだ。

p.21

消費者にクセをつけさせることができれば、その商品は間違いなく長寿になるのだ。
だとすれば、商品を提供する側には責任が生じる。一度消費者にクセをつけさせた以上、安易にそれを変えてはいけない。たとえ苦しい時期があったとしても、なお待っている人を決して裏切らない。そういう深い倫理観に裏打ちされてこそ、一対一のかけがえのない関係を築けるのである。

大谷和利著『iPhoneをつくった会社』アスキー新書

p.5

これからの企業にとって成功と成長の鍵を握るのは、優れた製品を作るだけでなく、顧客との関係を可能な限り密なものとしていくことにある。この観点に立てば、目まぐるしいほどのモデルチェンジで消費者の購買欲を煽るマーケティングはすでに時代遅れであり、ユーザーに愛され、ユーザーと共に成長いていける包括的なシステムを作り上げることが重要だ。

p.27

今も続く彼らのやり方は「自ら土俵を作ってルールを決める」ということにある。そして、世界初・業界初でなくとも、そのカテゴリーの中で最良の製品作りを目指すのだ。

p.59

アップル社に「ハードウェアを捨ててOSをライセンスしろ」と言うことは、喩えれば、ポルシェやBMWに「車体開発を止めてエンジンの電子制御やサスペンションのチューニングのノウハウを他社に供給せよ」とアドバイスするようなものだ。それらの個性的な自動車メーカーの市場シェアも数パーセントに過ぎないが、企画・設計ノウハウだけをライセンスすることはなく、製品をトータルに開発して販売する道を選んでいる。それが、自社のブランドを守り、優れたユーザー体験を創出する唯一の方法だと知っているからだ。

p.80

業績とマスコミ受けが共に相悪だった1987年も、ジョブズ復帰後の”Think different.”戦略が功を奏して見事に復活を遂げた今も、コアなマックユーザーは変わらずにアップル製品とアップルデザインを愛してきた。それは、アップル社のポリシーがマーケティング主導やコスト優先から生み出されたものではなく、常に新しいアイデアを提示してユーザーを啓蒙し、挑発するスタイルを採ってきたからに他ならない。

佐々木正悟著『快ペース仕事術』グラフ社

p.86

集中力、論理能力といったビジネス・パーソンが重宝しそうな能力は、生体リズムの図を見ると朝九時に出社する人の場合、出社して即座にピークを迎えることが見て取れる。
ということは、出社直後にメールのやり取りをしてしまうのは、いささかもったいない時間の使い方といえそうだ。
(中略)
朝の時間は、最も難しい仕事か、または最も「知力」を必要としそうな仕事に活用すべきなのだ。

p.92

あなたは、朝一番から難しいクレーム対応を完全に終わらせようと意気込んでいた。しかし、実際にはすぐにやる必要がない書類整理を始めてしまった。しかも妙にはかどる。
いつもなら、書類整理にもそれほど気乗りはしないにもかかわらず。
この事態は、朝、「やる気を管理する脳」が「気の進まないクレーム対応」を全て完遂するのに十分なだけの「やる気」を供出してくれなかったせいで生じ(る)ものだ。

p.166

まず結論から言うと、緊急事態で焦燥感や不安をのさばらせてはいけない。メリットがゼロだからだ。
焦燥感に駆られたり不安に陥ったりすると、肉体も精神もエネルギーを使う。つまり、仕事以外のことにエネルギーを使う。エネルギーというものは瞬間的には使えないので、エネルギーを使うということは時間も使うということだ。
(中略)
しかしもっと悪いことがある。仕事や勉強で不安に陥ってしまった人は、不安なことを「考え」始める。つまり、先ほどあげたブドウ糖のようなエネルギーを、不安について考えるという形で「食べて」しまうのだ。

三浦展著『下流大学が日本を滅ぼす!』ベスト新書

p.78

ところが日本のマーケティング業界のおバカさんたちが、大学教授も含めてだけど、自分たちが仕事をしていることを証明するために(としか思えないけど)、すぐにアメリカから新しい概念を輸入するんだね。で、ナントカ経営協会とかがセミナー開いたりして、顧客満足度が大事だって騒いだんだ。それでやたらと起業が顧客満足度調査なんかをするようになったもんだから、消費者がそれまでは別にどうでもいいやって我慢していたことでも、不満をなくしましょうってことになって、重箱の隅をつついたような改善活動をするようになった。それが消費者のクレーマー化を助長したんだと思うね。

p.123

本を読んだり、考えたりすることでそのブランクを埋めることができる。自分の実体験が不足している分、読書や思索によってその不足を補う、あるいは実体験を上回ることができる。そういう人間こそが大学で学ぶにふさわしい人間だ。言い換えれば抽象的なことが考えられる、自分の実体験だけじゃなくて、一般的、普遍的なことを考えられる。そういう人間が大学で勉強すればいいのだし、大学が育てるべき人間はそういう人間だし、大学が入学させるべき人間の基準はそういう人間かどうかということだろう。

p.219

そうやって学校の教師は疲弊しているんだと思う。そんなことより、落ち着いて勉強を教えることに専念させてやらないとかわいそうだと思うよ。塾の先生は教えることに専念できるから教え方がうまいだけで、学校の先生が教える能力が低いわけじゃないと思う。

ダライ・ラマ14世&L. V. D. ムイゼンバーグ著『ダライ・ラマのビジネス入門』マガジンハウス

p.27

意思決定プロセスの最終段階ではつねに、「この決定による影響は組織やその他の関係者にとって有益だろうか?私の動機は何だろう?自分の利益だけを追い求めていないだろうか、他人の利益も考慮しているだろうか?」と自分に問いかけよう。

p.40

仏教の教えでは、人間とは、これまで積み重ねてきたあらゆる行いの集合体です。善い行いは善い人間をつくり、悪い行いは悪い人間をつくります。悪行の影響は、その後になされた善行によって軽減されます。これが〈カルマの法則〉です。

p.46

自分を疑うのは時間の無駄です。問題の解決には役に立たないのですから。自己不信と戦うには、リーダーは〈縁起〉の概念を日常的に実践しなければなりません。つまり、すべての要素を考慮に入れることで賢い選択をするということです。意志決定をする立場にある人が広い視野で考えるようになると、自分の行動の正しさを感じられるようになり、自信が芽生えてきます。

p.70

ブッダは、道徳にかなった指示には従うべきだが、「不健全」な命令は無視するようにと説かれました。教師の教えに懐疑的であることの重要性を指摘なさったのです。師の中でもその最もたるものであるブッダは、弟子に言われました。
「人々が黄金の純度を測るために火に投じ、削り取り、試金石で調べるように、あなたも私への敬意から私の教えを信じるのではなく、私の言葉が正しいかどうかを徹底的に検証してから受け入れなければならない」

p.98

人生の目的は何かと聞かれて、はっきりとした答えをもっている人はほとんどいませんーもちたいという人は多いのですが。この質問に対するわたしの答えはとても単純です。人生の目的とは、しあわせになることです。そして、目的を共有すること、つまりともにしあわせを望むことが、人が組織への帰属感をもつための必須の条件です。

ランディ・パウシュ、ジェフリー・ラズロー著『最後の授業』ランダムハウス講談社



p.8

親ならだれでも、自分の子供に善悪の分別を教え、自分が大切だと思うことを伝え、人生で訪れる問題にどのように立ち向かうべきかを教えてやりたい。自分が人生で学んだことを話して、子供が人生を歩む道しるべのひとつとしてほしい。

p.45

もうひとつ、父が教えてくれたと思うことがある。子供は何よりも、自分が親に愛されていることを知っていなくてはならない。そして、たとえ親が生きていなくても、子供はそれを知ることができる。

p.85

明日のスキャンの結果が悪かったとしても、生きていることはすばらしくて、今日ここにきみと一緒に生きていることはすばらしいという気持ちを、きみにも知っていてもらいたい。
どんな結果を知らされても、その瞬間に僕が死ぬわけじゃない。翌日も死なないし、その次の日も、その次の日も、まだ死なないだろう。
だから今日は、いまこのときは、とてもすばらしいね。僕がどんなに楽しんでいるか、わかってほしいんだ。

p.130

つまるところ、教育者のいちばんの役割は、学生が内省する手助けをすることだ。

p.131

ジムのトレーニングですばらしいのは、努力をすれば、とてもわかりやすい結果がついてくることだ。そして教師の仕事は、鏡を見たときに筋肉の成長が見えるのと同じように、学生が自分の精神的な成長を理解する方法を教えることだ。

p.138

「きみが賢いのは知っている」と、僕は言った。「でも、ここにいる全員が賢い。賢いだけではだめだ。僕が研究チームに求めるのは、一緒にいるみんなが幸せな気分になることを手助けできる人だ。」

Joel Spolsky編『BEST SOFTWARE WRITING』翔泳社

p.9

私はアウトソーシングに関する本をみな読んでみたけれど、ソフトウェア開発というのはデザインであって製造ではないのだということを、基本的に誰も理解していないように見える。
(Joel)

p.11

ソフトウェア会社がオペレーションの効率と戦略とを混同するとき、アウトソーシングは失敗する。オペレーションの効率が良いというのは、作業コストがより安いか、あるいは作業がより速くできるということだ。一方戦略というのは、長期的な競争優位を作り出すことであり、ソフトウェア会社にとっての競争優位は、革命的なアプリケーションを作る能力である。
(マイケル・ビーン)

p.96

優れたデザイナを雇ってデザインさせれば、製品は美しいものになると思うかもしれない。しかしあなた自身が良い趣味を持ち合わせていないのだとしたら、どうやって優れたデザイナを見分けられるのだろう?
(中略)
美が何かを知らずに美しいものを作り出すためのプロセスを管理することはできないのだ。
(ポール・グレアム)

p.238

開発者の職の候補者を検討するときには、次に挙げる10個の質問を自分にしてみるといい。
  1. この候補者はチームに他の誰も持っていないものをもたらすだろうか?
  2. この候補者は学び続ける人だろうか?
  3. この候補者は自分の弱さに気付いており、それについて気兼ねなく議論することができるだろうか?
  4. この候補者は多才で、製品を成功させるために「必要なことは何でも」する用意があるだろうか?
  5. この候補者はあの「10Xプログラマ」の1人だろうか?
  6. この候補者は名門のコンピュータサイエンス学科を出ているか?
  7. 博士号を持つ候補者であれば、その人が「パッケージソフト資質」をも併せ持つまれな人であることを示すものがあるか?
  8. この候補者はパッケージソフトの開発チームでの経験を持っているか?
  9. この候補者は良いコードを書くか?
  10. この候補者は余暇にコードを書くくらい、プログラミングが好きか?

(エリック・シンク)

Joel Spolsky著『Joel on Software』オーム社

p.2

人生は、自分の仕事を憎むにはあまりに短いのだ。

p.29

これの意味するところは、残存バグがたくさんある場合には、スケジュールはあてにならないということだ。

p.205

これらのバグが見つかるには、いずれも、実世界で何週間も使われる必要があった。プログラマがラボでバグを再現して修正するには、2、3日かかったかもしれない。多くのバグ修正と同様ならば、修正したのは1行だけだったかもしれない。あるいは、2、3文字だけだったかもしれない。しかし、その2、3文字のために多くの時間と労力が支払われているのだ。
コードを捨ててスクラッチからやり直すとき、あなたはそういう知識のすべてを捨てている。それら、蓄積されたすべてのバグフィックスを。何年にもわたるプログラマの作業を。

p.206

スクラッチから始めるときに覚えておかなければならない重要な点は、あなたが最初にやったときよりもいい仕事ができるだろうと信ずべき理由はまったくないということだ。

p.226

もしあなたが開発チームを作っているなら、たくさんの経験の浅いプログラマたちに、抽象度の高いツールを使って大きなコードのブロックを作り出させていくのはOKだが、もし深い経験を積んだメンバがいて手強い問題を片付けるのでなければ、チームは上手く機能しないだろう。

p.229

ソフトウェアの世界というのはあまりに広く複雑で多面的であり、そのため、いつもは知的だと思える人が、ブログの中で「Microsoftはまともなオペレーティングシステムが作れない」みたいな愚かなことを書いているのは、率直に言ってバカにしか見えない。
(中略)
私はMicrosoftを擁護しているのではない。ただ、深い無知に基づいてお手軽に一般化された議論をするというのが、今日、ネット上でなされる最大の時間の浪費だと言っているだけだ。

p.240

の意見は?と聞かれたら、そして私は偏っているわけだが、トップに立っているのがプログラマでない限りソフトウェア会社が成功することはないと思う。

p.266

もっと重要なことは、最高の人間を雇うことへの執着だ…十分優秀な人間が見つけられないなら、小さいままで十分満足だ(1年につき6週間の休暇を用意すれば、人を見つけるのはそれほど難しくはない。)そして私たちは、すでに雇っている人々が成長し、新しく入ってきた人たちの教育や指導ができるようになるまでは、会社を大きくしようとは思わない。

p.276

それがビジネスで核となる機能ならー何が何でも自分でやることだ。

北森義明著『組織が活きるチームビルディング』東洋経済新報社

p.24

「意味と意味が出会うとき、人間のコミュニケーションは成立する。」(ルウェル・ハウ)

p.66

チームを作っていく人間関係の中では「自分が、他人からどう見えているか」についての情報は、とても貴重なものです。それを相手に伝えようとするとき、「相手を変えてやろう」という意図でメッセージを送るのではなく、相手が持っている、自分で自分を変えていこうとする自然な力を信頼し、そのために必要な情報を送る。それが「フィードバック」なのです。

p.72

「人にとっていちばんむずかしいのは、自分を知ることだ」
(古代ギリシャの哲学者 タレス)

p.188

メンバーがエンパワーメントを発揮するためには、メンバー本人の「気づき」ももちろん重要ですが、それを支える周囲からのフィードバックや、適切なリーダーシップも必要になります。